住宅のデザインに至るまで
日本に輸入住宅というものができて、45年近くの時が流れました。初めて海外の住宅を見たのは米軍基地にあったいわゆる「米軍ハウス」と、テレビや映画で見るアメリカの家の様子。それを見て「なんて格好のいい家なんだ」と思ったのが住まいとデザインに興味を持ったきっかけです。当時の日本にとってアメリカというのは、すべてが輝いて見えた憧れの存在でした。 それからデザインの道に進み、自動車のデザインなどいくつかの経験を経て、ふとしたことが縁で住宅のデザインに携わることになります。そのきっかけというのはアメリカから家を輸入するという、当時としては荒唐無稽とも思えるプロジェクトに誘われたことでした。 その頃の日本の家というのはまだ戦後の復興の残影が残る頃に建てられた見た目ボロ屋といった風情のもので、戦前の伝統的な街並みともまた違う、必要な機能を満たすために建てられた最低限の住宅といったものばかり。 そういった中に海外の住宅デザインをそのまま持ち込むというプロジェクトは、当時の富裕層の方々の美的感覚とマッチして好評を博し、それが一般市場にも徐々に裾野を広げ、現在の輸入住宅というジャンルを形成することになりました。 それから輸入住宅を初めて日本に持ち込んだメンバーの一員として、長く住宅のデザインに携わることになったのです。