単調になりがちな壁面におしゃれな雰囲気をもたらす“腰壁”。
海外デザインの住宅ではよく見られ、「家づくりをするなら腰壁を使っておしゃれにしたい」と憧れる方も多いのではないでしょうか。
腰壁には空間を一層華やかでおしゃれにする効果がある一方で、フローリングやインテリアなど周囲とのバランス、選ぶカラーなど注意しなければならないポイントもあり、緻密な設計とデザイン力が求められます。今回は、腰壁のメリット・デメリットをはじめ、素敵な腰壁でおしゃれな空間を作るコツを参會堂がデザインした施工事例とともにじっくりとご紹介していきます。
目次
腰壁とは?腰壁のメリット・デメリット
見た目の印象に効果をもたらす「装飾的な腰壁」、そして「空間を仕切るための腰壁」の二種類があります。
装飾的な腰壁の役割と施工例
人の腰くらいの高さの位置までの壁面に、異なる素材を張って装飾性を高めておしゃれに仕上げたものを腰壁(パネリング)と言います。空間のアクセントにできるという装飾性のほか、壁の傷や汚れ防止の役割という実用性も兼ね備えています。
装飾的な腰壁のメリット
家具を移動するとき、荷物を持って歩いたとき、ペットを飼っている、子育てをしている…など、特に壁面の下部には傷や汚れがつきやすいかもしれません。
タイルなど耐久性の高い素材で腰壁を作れば、「壁紙が剥がれる」「壁に穴があく」というリスクも防げます。しかも、傷や汚れが付いても補修がしやすいのです。
それに、臭いを吸着しやすいクロスと比べると、タイルなどの素材は空間の防臭効果が期待できるでしょう。
また、アクセントが生む高級感にも期待できます。ひとつの素材と色だけではシンプル過ぎる空間になるところ、腰位置までに“異素材”や“アクセントカラー”を取り入れることで重厚感とおしゃれを演出できるでしょう。
装飾的な腰壁のデメリット
しかし、気を付けなければならないのがデザイン。部分的なアクセントとして取り入れたつもりでも、空間へは大きく影響する部分ですから綿密なデザインが必要となるでしょう。
使う素材の相性や、色味のバランスによっては、おしゃれというよりも圧迫感で部屋が狭く見えることもあるため、より慎重な設計が求められます。
ひとたび設置すると、簡単には変えることができません。「思っていた雰囲気とだいぶ違う」「おしゃれな感じがしない」という誤算が生まれないように念入りな設計も大事です。また、厚みのある素材で凹凸が生まれることから、どうしてもホコリが溜まりやすくなってしまいます。ホコリがついた腰壁は、おしゃれとは言えませんよね。
どんな素材でも“段差”はできるため、ホコリが溜まらないように掃除を習慣化するのがおすすめです。
空間を仕切るための腰壁の役割と施工例
空間を仕切るために「人の腰の高さ」まで作った壁も“腰壁”です。腰壁を設置することで一つの部屋で空間を分けられる役割、そして腰までの位置で視線が遮られるので目隠し効果もあります。
また、吹き抜け・階段、ホールなどとの相性もよく、手摺としての代用はもちろん、段差のあるところでは落下防止の役割も備わっています。
空間を仕切るための腰壁のメリット
空間の仕切りとして用いた場合、天井までの高さにする壁面と比べると空間に奥行きが生まれておしゃれな印象になります。
空間のつながりで“広がり”が感じられますし、開放的でおしゃれな雰囲気をもたらしてくれるのがメリットです。
また、キッチンに腰壁を設置するとカウンターにすることもできます。対面キッチンなら、キッチン側を隠しておしゃれに見せる効果はもちろん、料理を一時的に置くカウンター、軽く食事をするスペースとしても使えて便利になるでしょう。
また、腰壁を利用しておしゃれな収納スペースを作るのも工夫のひとつです。
空間を仕切るための腰壁のデメリット
空間の仕切りとして考えた場合、“天井までの壁”と比べて“腰壁”は冷暖房効率が弱まります。
特に、暖かい空気は上に流れるため、冬は設定温度や風量を強くしなければならないケースがあるかもしれません。
吹き抜けや大きな空間に仕切りとして腰壁を採用するときは、冷暖房の効率を悪くしない配置、シーリングファンなどの設置なども併せて考える必要があります。また、腰の位置ほどの高さとは言え、空間全体を見たときに視線がぶつかる箇所も存在してしまいます。開放感はある一方で、風や光の抜け感はなくなるのがデメリットのひとつでしょう。
腰壁で使えるおしゃれな素材
おしゃれな腰壁にするために使える素材をご紹介します。
モールディング
凹凸の陰影が特徴的でおしゃれなモールディングを腰壁に使うと、立体感や高級感、デザイン性が高まります。
腰壁をはじめ、天井廻りや窓枠、開口枠、巾木などにも使われる装飾で、空間全体をおしゃれに仕上げることが可能です。
もともとは西洋建築において「木」「石」を使ったのがモールディングでしたが、今では合成樹脂製や金属製など幅広い材質が使われています。
モールディングのデザインは実に多彩で、シンプルなのに高級感のあるものや、まるで額縁のような繊細な模様が施されたおしゃれなものまでさまざまです。模様とカラーの組み合わせによってアクセント効果も高まり、クラシカルにも華やいだ雰囲気にもしてくれます。
また、モールディングについた多少の汚れや傷は、簡単に修復することが可能です。
タイル
防水性と耐久性の高さを兼ね備えたタイルは、キッチンやトイレ、洗面所などの水回りによく使われるおしゃれな腰壁です。
水回りの壁は、お住まいのなかでも水分の付着による劣化に注意しなければならない箇所。特に、壁面の下部は汚れもつきやすいため、防水性のあるタイル腰壁を取り入れることによってお手入れがしやすく、衛生的な空間になります。
また、タイルの大きさや色味、張り方に変化をもたせれば、デザインのバリエーションも多彩でおしゃれです。
アイデアや感性によって、空間がどんな雰囲気になるかも変わります。タイルのつやのある表面に自然光や照明があたることで、一層、表情豊かでおしゃれな空間を作ることができるでしょう。
タイルの腰壁を設置することで、デザイン性だけでなく、実用性もしっかりともたらしてくれます。壁紙
モールディングやタイルなどの素材よりも、コストをおさえたのが壁紙を用いる方法です。
ベースとなる壁紙とは異なる模様、色の壁紙を腰のあたりの位置まで張ることで、アクセント効果がもたらされます。お部屋の見た目の印象は、これだけでもガラッとおしゃれに変わります。
ただし、あくまで腰壁“風”としての仕上げでしかありません。本来、腰壁を設置する目的のひとつに「汚れ・傷を防ぎやすいこと」があり、防水性や耐久性の高い素材を使うことも多いです。壁紙を使った「腰壁風」の場合、特に水回りや湿気のある空間では剥がれなどが目立ってくるケースもあります。
腰壁を使ったおしゃれな施工事例
参會堂はこれまでに手掛けたヨーロッパデザインの住宅には、おしゃれな腰壁が使われた施工事例がたくさんございます。ぜひ、ご覧ください。
空間を華やかに彩る装飾性の高い腰壁
腰壁の見切り材となる「チェアレール」を腰の高さにし、パネルモールディングでパネルを形成しました。
アイアン素材の階段手摺りとの高さのバランスがよく、フローリングの木目の方向も相まって、通路から奥に流れるようなラインが綺麗でおしゃれです。
壁の色と同じくホワイトの色を選びましたが、装飾性の高い立体的なデザインにより、高級感のあるアクセントとなりました。
階段上部のシャンデリアや通路の壁面のニッチに飾った花、アイアンの手摺りなど、ヨーロッパデザインのクラシカルでおしゃれな雰囲気でまとまっています。
アーチ垂れ壁を開口部に設けました。ヨーロッパデザインの住宅でよく採用される伝統的な技法です。モールディング腰壁の上品な雰囲気とも相性が良く、空間のアクセントに。圧迫した感じをもたせず、空間同士を緩やかにつないでくれました。
アーチ垂れ壁の曲線のラインは柔らかで、おしゃれで優しい表情を空間にもたらしてくれます。
また、垂れ壁の床部分や奥の部屋のセンター部分のフローリングは、無垢材の小さなピースを組み合わせた繊細なデザインの「寄木張り」としました。
ヨーロッパ建築では伝統的な技法として古い時代から親しまれてきたフローリングデザイン。空間のおしゃれなアクセントになりました。
立体的なモールディングがおしゃれな腰壁
モールディングをいくつも組み合わせて形成した存在感のある装飾柱です。
立体的な模様でデザイン性が高まり、空間に華やかでおしゃれな印象をもたらしてくれました。
“白”というシンプルな色ですが、上部・中部・下部と素材の厚みを変えて凹凸によるデザインがバランスよくなるように慎重に設計しています。
全面塗装仕上げで、下塗りをした後、さらに丁寧に仕上げ塗りをしました。柱に取り付けた照明がモールディングに反射し、一層、美しくおしゃれな印象に。美術館のような豪華な装飾柱です。
トイレは腰高までタイルにし、見切材もタイル材で仕上げました。空間全体はつながっているものの、中間に腰壁を設けることで異なる2つのタイプのトイレを分けることができます。
明るい白をベースカラーとし、腰壁部分に“黒”という対照的な色を取り入れておしゃれなアクセントにしました。
黒の面積が大きいと圧迫感や暗さを感じるものですが、アクセントとして少し取り入れる場合は、重々しい印象になることがありません。清潔感はもちろん、スタイリッシュでおしゃれ、デザイン性のある印象のトイレに仕上がりました。
主張しすぎないデザインが優しく上品な腰壁
こちらは参會堂がデザインしたヨーロッパ住宅「シェリーハウス」の階段の壁面です。
壁面にパネル材を設け、細いラインが天井方向に揃った綺麗なデザインの腰壁となりました。オリジナルの木製階段の“木材”の優しい風合いと同じテイストでまとまっています。
上から見た階段の写真です。壁面と腰壁との間にある見切り材は、あえてシンプルなものに。
シェリーハウスの“ヨーロッパのかわいい家”というコンセプトに合わせ、華美過ぎず、上品でおしゃれな仕上がりとなりました。
壁面に取り付けられた照明は、壁面全体の「ホワイト」の明るい色味の効果もあわさり、空間が爽やかでおしゃれにまとまっています。
また、階段手摺りも、手が触れる部分は木材で“温かみ”と“優しさ”をプラス、バラスターの部分に黒を使いアクセントをもたせることができました。
木目のパネルを張った腰壁事例【番外編】
ここまで紹介したような施工事例のほか、こういった木目のパネルを張った腰壁もあります。
アーチ状の窓がいくつも並ぶ、ヨーロピアンスタイルの住宅です。窓と窓の間を埋め尽くすように、長方形の木目パネルを高い位置まで取り付けています。
ヘリンボーンのフローリングとの相性も良く、空間全体が木材の風合いでクラシカルなデザインになりました。
壁の木製パネルはウォールナットの高級木材、イタリアではよく家具の材として使用される、イタリア人好みのパネルデザインです。
床はアンティークデザインのヘリンボーン、壁パネルとデザインの相性ががとても良い、落ち着いた大人の空気感があるインテリアとなりました。
夜、ボックス型の1人掛けソファーで本を読まれるというオーナーは、「まるで高級ホテルのラウンジを思わせる、この空間に非常に満足しています。」とおっしゃっていました。
ソファーの背面、奥の通路に木材による腰壁を設置しました。だいぶ高い位置まで木材のパネルを張りましたが、大理石や壁面は白で空間全体が明るく開放感のあるため、圧迫感がありません。
階段の踏み板やフラワースタンド、巾木との色味がバランスよくまとまり、木材パネルが温かみのあるおしゃれなアクセントになりました。
モールディングを施した壁面パネルによってデザイン性が高まり、立体感により陰影のある空間となりました。多角形で開放感のある吹き抜けとの境目がはっきりし、より個性的でおしゃれな雰囲気となっています。
腰壁をおしゃれに仕上げ、おしゃれ空間を作るコツ
腰壁は、シンプルな空間をおしゃれに仕上げる効果があります。空間のアクセントになる腰壁をおしゃれに仕上げるコツをご紹介していきます。
壁紙やフローリング、建具とのバランスをしっかりとイメージ
壁、床、天井はもちろん、テーブルやソファーなどの家具との相性の良いカラーを取り入れた腰壁を作ることが“おしゃれ”に仕上げるコツです。
お部屋の壁に「ホワイト」を選ぶ方も多いですが、腰壁にモールディング装飾を施すと立体感が生まれてかなりおしゃれになります。
天然木のフローリングと同じ色味でまとめた場合は、フローリングの張り方に個性を持たせるとおしゃれな雰囲気にすることが可能です。
壁紙やフローリング、建具の配置や、腰壁の高さなど、全体的にまとまりよく仕上がるようにバランスをイメージしながらデザインすることが大事です。カラーを増やさない
腰壁を作ることによって、空間内のカラーの数が増えないようにしましょう。
いくつもの色を使い過ぎると、たとえ室内が整理整頓されていても、色が入り乱れてまとまりがない印象となってしまうのです。
空間は、床・壁・天井などの内装の「ベースカラー」、建具や家具、カーテン、ラグマットなどの「アソートカラー」、インテリア小物や壁面の装飾の「アクセントカラー」で構成されています。
センス良くおしゃれな空間にするには、3つのカラーでまとめるのが良いと言われています。たとえば、「白い壁に、白い腰壁」というように壁の色と類似した明るいカラーの腰壁にすると、空間の色が少なめで開放的ですっきりした印象となるでしょう。
また、壁よりも濃い色味を腰壁に使うとアクセントがより強調されます。
「白」と「木目」は暖かく居心地の良さが感じられる一方で、高級感も叶えてくれる組み合わせです。黒のようなダークカラーを取り入れると「重厚感」や「スタイリッシュ」な雰囲気でまとまります。
ただ、淡いブルーやピンク、イエローといったパステルカラーを多く取り入れる際は注意が必要です。部屋全体のカラーが増えると子供っぽいイメージとなってしまいます。腰壁を取り入れるときは、3色ほどのカラーでまとめられるとすっきりおしゃれになります。
家具や照明のインテリアは空間のコンセプトに合わせる
空間全体のコンセプトに合わせた家具や照明を選びましょう。
腰壁は空間にアクセントをもたらすおしゃれな素材ですが、むやみに取り入れても家具や照明とミスマッチとなってしまうこともあります。
たとえば、高級感のあるシャンデリアは、大理石の床やホワイトのモールディング装飾、アイアン素材などと相性がよく、ヨーロッパのクラシカルな雰囲気をコンセプトにしている空間にマッチする照明です。
ヨーロッパデザインでクラシックな雰囲気にしたい、木材の温かみを演出しナチュラルなテイストにしたい、おしゃれで先進的なスタイリッシュさを追求したいなど、空間のコンセプトに合わせつつ、家具や照明を選び、腰壁とバランスよくまとまるようにしましょう。
住宅から日本っぽさを無くす最も効果的な方法
日本では、天井・床と壁との間に廻縁や巾木、素材同士の変わる境界線のところに見切り材などを使います。しかし、隙間を発生させないための実用的な目的のためで、シンプルなものが多いです。
腰壁は、ヨーロッパをはじめ、海外デザイン住宅で昔から取り入れられてきた空間作りの技法で、とてもおしゃれ。日本っぽい雰囲気をなくし、海外のようなおしゃれな家づくりをしたい方に「腰壁」は向いています。また、日本と海外では、窓枠や床材などに使われる素材など、家づくりのベースが全く違います。日本で海外デザインの住宅に似た素材で腰壁を作っても、一見おしゃれに見えても「風」でしかありません。
海外デザインを追求するなら、素材を海外から輸入するのが最も効果的です。参會堂は、本物の家づくりにこだわって、これまでに多くのお客様と共に家づくりをしてまいりました。 “風”ではなく、“本物”を追求するために、質の高い素材をご提案しております。海外デザインの家を日本の素材で代用した「風」での家づくりはいたしません。海外の素材を直輸入できるルートを持ち、本当に質の高い建材や家具を厳選。現地のパートナーとも提携しながら、本物のヨーロッパデザインの家づくりが可能です。
「腰壁を取り入れた海外デザインの住宅にしたい」という大まかなイメージでも構いません。ぜひ、私ども参會堂にご相談ください。
一緒に、かけがえのない家づくりをイメージから形にしてまいりましょう。
参會堂が創り出す「唯一無二」の独創空間
参會堂は、1992年の創業から一切の妥協を許すことなく建築と向き合ってきた、海外デザイン建築を得意とする設計事務所です。
どの建築会社にも真似できない秀逸な参會堂の建築デザインは、住宅設計のみならず、クリニック設計や土地活用・賃貸設計といった分野で、多くのお客様からご支持頂いております。
住宅設計なら「ずっと家に居たくなる空間」、クリニック設計なら「ホスピタリティが溢れる空間」、土地活用・賃貸設計なら「いつまでも色褪せない魅力を放つ空間」と…。参會堂は、それぞれのお客様のご要望に合った価値を生み出し、ご提供しております。
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