日本での家づくりでも、近年人気が高まっている「平屋」。
ワンフロアで生活できる平屋は、コンパクトながらにも優れた動線が実現できる間取りで、暮らしやすさの魅力から、世代を問わず注目されています。
ただ、日本で平屋というと昔ながらのシンプルな和風住宅がイメージとして捉えられやすく、「平屋を建てるなら洋風にしたい」という方もいるのではないでしょうか。
日本とは文化や生活習慣などたくさんの異なる点が多く、ヨーロッパの平屋ならではの魅力も多彩です。
今回は、日本とヨーロッパ平屋の違いや建てる際の注意点に触れながら、参會堂がこれまでに建てた海外デザインの平屋の施工事例もご紹介していきます。
目次
日本とヨーロッパ 平屋の違い
ワンフロアに生活空間が詰め込まれた「平屋」ですが、日本とヨーロッパでは間取りやデザインなどにおいての違いがたくさんあります。ひとつずつ見ていきましょう。
間取りの違い
日本では、“平屋”というと昔ながらの和風住宅を連想する方もいるかもしれません。
和風住宅の平屋は、部屋と部屋の間には「襖」や「障子」を隔てる設計が多くみられました。家族の人数が増減したとき、ライフスタイルが変化したときなどにも柔軟に対応できる間取りです。
襖はオープンにしたまま、あるいは取り払うことでたくさんの人が集まれるような広大な空間も完成します。日本特有の木造建築ならではの工夫が施されています。
また、日本特有の床材「畳」を使った和室、客人をもてなすための床の間など、伝統的要素を取り入れるのも日本平屋の特徴です。
日常的にはリビングやダイニングと一体化させて使いつつ、来客があれば床の間で過ごしてもらう「柔軟性」がポイントとなっています。
一方、ヨーロッパの平屋は家の中心となるリビングを大きく設計し、キッチンやダイニングも仕切ることなく同じ空間にまとめたオープンプランニングが多く見られます。
住まいの中心は家族や友人が集う社交の場にもなるリビング・ダイニング、その周囲に浴室やトイレといった水回り、寝室、書斎などのプライベート空間を配置。
皆が共有できる空間、住人のプライバシーを守るメリハリのある空間作りがヨーロッパ平屋のスタンダードな間取りです。
デザインの違い
日本の平屋は、切妻屋根や寄棟屋根などシンプルな外観デザインが特徴的です。
自然素材を活かした塗り壁、周囲の景観にもなじむ木目調サイディングなど、落ち着いたデザインを採用することが多い傾向にあります。
シンプルなものにも美意識を見い出す「わびさび」の精神が日本住宅にも反映されているのかもしれません。日本の平屋は、街並みに溶け込みやすい落ち着いた外観が特徴的と言えるでしょう。
対して、ヨーロッパの平屋は華やかで芸術的なデザインが多いです。宮殿や教会などの外観を彷彿させる、ヨーロッパならではの伝統的な建築技法が多用されています。
アーチ形状の壁面、重厚感がある円柱、かわいらしさが漂う格子窓、繊細な装飾のモールディングといといったような美しさが外観デザインに盛り込まれているのが特徴です。
また、ヨーロッパといっても広く、地域による特色も反映されています。
たとえば、南欧住宅には、白い漆喰の外壁に、オレンジやアイボリーなどを織り交ぜた色味の屋根材で仕上げた明るい印象の外観。石積みの外壁で重厚感があるイタリア住宅。三角屋根やドーマー窓を取り入れたドイツの家。
共通する部分はあるものの、地域ごとに多彩な特色があります。
機能性の違い
高温多湿の気候が特徴的な日本では、梅雨、夏の暑さ、台風などさまざまな外的要因に耐える家づくりが求められます。日本では木材を中心とした建材で家づくりが行われていますが、「木」が持つ調湿性も湿気対策の一環です。
ただ、昔ながらの古い平屋では「隙間風」が目立ち、気密性の低さが暑さ・寒さを作り出す要因になっていました。それを改善するべく、最近の日本では「高気密・高断熱」の家づくりが主流に。隙間風をなくした分、24時間換気システムなどにより計画的な換気が必須となってきました。
また、日本は地震大国でもあり、近年は建築基準法により耐震性が非常に重視されています。耐震金物や壁量計算など耐震性の高い家づくりは必須です。
ヨーロッパの気候は温暖で比較的乾燥し、冬には寒さが厳しい地域もあります。基本的に家づくりでは「保温性」「断熱性」が重視されている傾向です。
特に、北欧やドイツなどにおける家づくりは、厚い断熱材を施し、レンガや石材など外壁・床も頑丈で強固な造りの寒冷仕様。二重窓など密閉性の高い窓ガラスが普及し、防犯面も兼ね備えた家づくりが特徴的です。
素材自体の耐久性が高く火災にも強いことから、長寿命な建物を実現しています。
使用する建材の違い
木材や土、瓦など自然素材がふんだんに使われてきた日本の伝統的な平屋。調湿性のある「木材」は湿気対策はもちろん、増改築のしやすさもあり、日本では主流の建材です。
日本でおなじみの瓦屋根ですが、瓦の下地に土が使われ、重い屋根が躯体に負担を強いて地震に弱い工法で施工されていた時期がありました。
最近は家づくりに耐震性を重視するようになり、重量が軽い防災瓦が登場。地震の揺れや強い風にも耐えうる工法も発展し、一層、耐震性・耐風性を高める工夫も施されるようになってきました。木材や瓦など素材の風合いを活かしつつ、日本の気候にも着目した技術も向上しています。
対してヨーロッパの住まいでは、石材やレンガを積み上げた厚い壁が特徴的です。フランスやドイツ、イタリア、イギリスなどヨーロッパ内でも地域によって素材の色味や質感が大きく異なります。
その土地ならではの風土・気候にあわせた伝統的な建材ばかりです。
海外の家が日本よりも長寿なのは、耐火性や耐久性が高い自然素材を使うことでメンテナンスをしやすく長持ちさせる、“長く住む”ことを想定した建築が採り入れられている背景があります。暮らし方の違い
家は家族が穏やかに過ごす場所という考えがある日本。
家族との団らんの場となるリビングの延長線上には、太陽や風を感じてリラックスできる縁側を配置。四季の変化を楽しみ、自然とのつながりを緩やかに感じられるような空間が家づくりに採用されています。
一方、ヨーロッパは「人を招いて交流する文化」が根付いています。
暖かな暖炉を設置すれば、寒い冬でも暖かい大空間で友達との交流が可能です。さらにテラスや中庭にも動線をつなげてホームパーティをすることがあります。
ヨーロッパにおける家は「人との交流の舞台」にもなり得る場所。家族が気持ち良く過ごせることはもちろん大切ですが、“誰かを招く”という前提での家づくりが一般的です。
日本で洋風の平屋を建てる際に注意するべきポイント
ここまでお伝えしたように、ヨーロッパの平屋は日本とは違う点が多々あります。そこで、洋風の平屋を日本で建てるときに気をつけるべきポイントをご紹介します。
平屋を建てる土地の気候にあった設計
地域性はありますが、一般的に日本は高温多湿の気候。梅雨、台風など四季によって天候が大きく変化するのが特徴的です。
ヨーロッパとは気候が異なるため、ヨーロッパデザインの外観や間取りを細かく真似ても、日本の風土には適さないこともあります。
特に、湿度・雨風への対策が不十分だと建物が劣化しやすく耐久性が低くなる恐れがあります。
たとえば、海外デザインの平屋を建てる際、庭とのつながりを意識した大きな窓を取り付けることもあるでしょう。ただ、日本の梅雨を想定した設計は欠かせません。
大きな開口部を設けるなら防水加工を徹底し、結露・雨漏りを防ぐ対策、換気計画も必要です。土地の排水性や基礎・床下への換気対策も求められます。湿気という日本特有の気候をよく理解したうえでの設計をすることが大事です。
建物はもちろんのこと、土地も含めて建物の寿命を延ばすための設計ができる事務所への依頼をしましょう。
外観デザインと地域性の調和
洋風の平屋は、シンプルな日本の平屋と比べて、芸術的なデザインが特徴的です。
海外では、そんな華やかなデザインの外観も街に溶け込むかもしれませんが、日本の住宅街では浮かないようにしなければなりません。
本来、家づくりは自分の理想を追求してこだわりを反映させたいものです。ただ、街並みに調和させることも大切なこと。
個性溢れる外観は魅力的ですが、地域の建築条例、景観に反することのないようにしなければ、後々トラブルに発展するリスクもあります。
地域によって家づくりのルールは異なります。
たとえば、低層の住宅が立ち並ぶエリアでは、高さが制限されていることもあります。そのほか、外観の色彩、素材の制限を設けている地域も少なくありません。前提となるのが建築基準法にしたがった住宅建築ですが、そのほか「地域独自のルール」を踏まえた家づくりが重要です。
日本に建てるヨーロッパの平屋は、本場の建築においての豊富な知識はもちろん、「日本で建てる・街並みに調和させる」といった事前調査も必要。日本の風土に合わせつつ、ヨーロッパの要素を盛り込んだ家づくりができる設計事務所への依頼がおすすめです。
日本の生活スタイルに適した間取り
ヨーロッパと日本では、そもそも文化や生活習慣も大きく違います。そのため、海外の間取りをそのまま取り入れても心地良い暮らしにつながらないことがあります。
日本とヨーロッパの生活スタイルにおいて代表的な違いは、「日本では土足で生活しない」という点です。基本的に、玄関は靴を脱ぐ場所、靴を脱ぎ一段高い“上がり框”により構成されています。
ヨーロッパでは「玄関で靴を脱ぐ」という概念がなく、玄関から内側がすぐに生活空間となることも多いです。
そこで、日本の生活スタイルを壊さずに、それでいて洋風の平屋に近づけることがポイントです。玄関スペースを広めに確保し、シャンデリアやモールディング装飾などで内装を華やかに。高級感のあるベンチやテーブルを置き、ひとつの部屋としてお客様をお迎えする機能をもたせるのもいいでしょう。
また、日本で「お風呂」というと、湯船に浸かって身体を温めるように、リラックスする空間というイメージが強いです。そのため、お風呂はトイレ、洗面所から独立させるなど、ヨーロッパとは意識が少し異なります。
洋風の平屋の間取りをそのまま真似ると、日本の習慣にそぐわずに暮らしにくくなります。日本ならではの生活スタイルに合わせた家事動線・生活動線を踏まえたレイアウトにすることが大切です。特に、平屋は2階建ての暮らしとは違う部分が多々あります。上下階という縦の移動がない分、横方向に効率の良い動線ができるような設計が重要です。
日本に建つおしゃれな洋風平屋の施工事例3選
参會堂はこれまでに海外デザイン住宅、高級注文住宅を手掛けており、そのなかには洋風の平屋の実例も数多くございます。
海外の要素を盛り込みながらも、「日本という風土に建てること」、そして住まい手のご要望を意識して設計した平屋ばかりです。今回はそんな施工事例を3つご紹介します。
特徴的な寄棟屋根がおしゃれな洋風平屋
赤いスパニッシュ瓦の、複数の寄棟屋根が特徴的な平屋です。アイボリーの外壁と相まって洋風なデザインを形成しています。
オレンジやクリームといった暖色系のS字状の洋瓦は、日本瓦とは違った華やかさが感じられます。
玄関ポーチのタイルにはオレンジ色を用いて、玄関扉やガレージシャッターには木製扉のブラウンを採用。
カラーバランスにも配慮した素材選びをすることで、屋根材・外壁材との調和のとれた外観デザインとなりました。
アプローチの砂利にも、イエローやピンク、ホワイトを敷き詰めて洋風デザイン住宅に合う印象にしています。
お住まい前面のなだらかな傾斜には天然芝を敷き、柔らかな風合いと天然ならではの美しい緑色の風合いにより、まるでリゾート地にいるような風景に。
全体的に“暖色”となるように統一感を崩さない複数の色を使用し、立体感のある外観を演出することができました。
夜間は外壁に取り付けられた複数のブラケットライトに照らされ、日中とは違った印象に。まるで建物が浮かび上がっているような幻想的な雰囲気を醸し出しています。
“夜だからこそ”可能となる陰影を作り出すライトアップは、夜の家に特別な演出をもたらす技法です。
照明の数が多過ぎると眩し過ぎることがありますが、壁方向に光を放ち優しい印象となるオレンジ色のブラケットライトをいくつか分散させて取り付けました。
玄関を中心に明るくして安全性を確保しつつ、少しずつ柔らかな光が放たれる神秘的な印象に。光の当たり具合による「光・影」のグラデーションが生まれ、一層美しい外観となりました。
自然素材を活かしたデザインの洋風平屋
木製の窓枠やシャッター、洋瓦などの自然素材が美しい住宅です。緑豊かな周囲の景色と調和し、温かみのあるデザインをつくりだしています。
丸みのある洋瓦は立体感を感じさせてくれる屋根材で、通気性や断熱性といった性能も確保しつつ、洋風平屋を可愛らしく彩ってくれます。
勾配をつけた切妻屋根は、オレンジやアイボリーといった複数の色が綺麗なグラデーションを描いています。
ガレージ扉やテラスなどにも、クリーム色の外壁・暖色系カラーを選び、まとまりのあるコーディネートに仕上げました。
勾配天井によって、開放感のある空間をつくりだせることも平屋のメリットのひとつ。横方向だけでなく、上方向にも奥行きとゆとりが生まれます。
キッチンとリビングの境目にはアーチ壁を採用し、緩やかに区切りつつも、それぞれの空間の目的をはっきりさせることが可能。外観や内装にアーチの曲線を描く技法は、ヨーロッパデザインの住宅でよく見られるものです。
木目の天井に存在感のある梁、天然フローリング材、暖炉の背後にあるレンガ。
ベースとなるクリーム色の内装に、ナチュラルブラウンやオレンジなどを配色することで、南欧風の可愛らしいデザインに包まれた空間になりました。
リゾート地を連想させる洋風平屋
3つのガレージシャッターがある特徴的な住宅です。
左右対称につくられた複数の煙突とドーマー窓や、中央のペディメントとサークル型の開口により、リゾート感のある外観となりました。
外観に三角や円、長方形などさまざまな形が盛り込まれ、表情豊かなデザインです。穏やかで暖かみを感じさせるクリーム色の外壁に、南国を思い起こさせる鮮やかな色味のスパニッシュ瓦を採用しています。
瓦の色ムラによるグラデーションが立体的で軽やかな印象を与えてくれます。
アプローチやガレージ手前には、オレンジ色やクリーム色のタイルを交互に並べることで、個性を演出。
玄関扉の前面には、引き締まる印象をもたらす黒のアイアン素材の門扉を取り付け、防犯性を確保しつつ、豪華さと暖かみが感じられるファサードとなりました。
細やかなところにまで気を配り、妥協することのない素材・デザイン・カラー選びをすることで、外観全体の統一感の実現につながります。
洋風の平屋を日本で建てるなら参會堂にお任せ
近頃は日本でも洋風住宅が建つことが増えてきましたが、日本と海外の違いを深く熟知して建てたとは思えない家も散見されます。
海外デザインの住宅を日本で実現することは簡単ではありません。日本とヨーロッパの平屋は、文化や気候、建築に対する考え方が大きく異なる部分が数多く見受けられます。
ヨーロッパの平屋は華やかなデザインで魅力的な間取りですが、そのまま日本で建てることが必ずしも成功にはつながりません。日本の気候と地域の建築ルールに寄り添った、きめ細かな配慮が大切です。
参會堂は、日本において数々の高級注文住宅に携わってまいりました。海外パートナーとの連携により、本物の素材選びと海外デザインを熟知した設計力がございます。
日本人が暮らしやすいと思える機能性と生活動線の確保。それでいて、ヨーロッパの芸術的な要素を取り入れることにより、あなたが想い描く、唯一無二の住まいの実現が可能となるでしょう。
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参會堂が創り出す「唯一無二」の独創空間
参會堂は、1992年の創業から一切の妥協を許すことなく建築と向き合ってきた、海外デザイン建築を得意とする設計事務所です。
どの建築会社にも真似できない秀逸な参會堂の建築デザインは、住宅設計のみならず、クリニック設計や土地活用・賃貸設計といった分野で、多くのお客様からご支持頂いております。
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